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随想「東京下町物語」
- 人情紙風船 -


昔から下町は人情があついところと言われている。
深川も向こう三軒両隣りといわれた昔から、
近所の人のつながりには強いものがあった。
それがここ何年かで、
銀座からも近い立地の良さからマンションが林立し、
他の町から人が大量 に移り住み、大きく街並も様変わりした。
昔懐かしい駄菓子屋などもいつのまにか姿を消した。
今日、下町気分が味わえるとすれば、
月の1日、15日、28日にある縁日のにぎわいと、
100基以上の神輿が永代通 りをもじどおり埋め尽くす、
江戸3大祭りの一つ富岡八幡神社の祭礼ぐらいになった。
人が他から移り住みマンションが建てば、
ご多分にもれずあちらこちらでマンション建設に伴う周辺住民とのトラブルがおこる。
これはその中の一つのマンションの話。
この マンションの隣に、更に高いマンションが建つことになった。
施主は向こう三軒両隣りの人々に挨拶しないまま工事を始めた。
すぐに南側に建つ新しい建物によって、
日照を奪われる住民の人たちが反対運動に立ち上がった。
管理組合は専門委員会を作って対策に乗り出すことにしたのだが、
反対運動が長引くにつれ、
管理組合の理事の中からこんな声が出始めた。
「この問題は被害を直接受ける人たちたけでやればいいのではないか」。
運動は建設反対の人々と、
反対運動そのものに反対する人々に別れ、
会合の度に両者の言い合いが続いた。
ある日激しい言い合いの末、
運動に反対するひとりが、
会合の途中で席をたち会合の部屋から立ち去った。
それからマンションの中でこの人と、
反対運動をしている人々との間がギクシャクし始めそれから2ヶ月後、
この人は他のマンションへ引っ越した。
更に反対運動を続ける人々同士にも、
だんだん意見の相違が生まれ始め、
お互いに疑心暗気の日々が続く。
施主は法律を盾に正当性を主張し一切の保障を拒否している。
建物は日ごとに建ち上がり新しい建物の影は、
このマンションのベランダを覆い少しづつ大きくなっている。
建てる前の周辺住民への挨拶一つで、
今の事態はかなり変わったものになっていたに違いない、
都会で住むことの気ずかいの一言が、
人の気持ちを結び付け、
反対にその一言を言わないことで、
周りの人々の気持ちもささくれだつ。
この下町から今、 人情のひとかけらが消えてゆく。 

鳩