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随想「東京下町物語」
- 下町気質 -


夕日

深川と言えば、
その昔お座敷きで羽織を着ることを許された辰己芸者の町として有名だが、
その下町気風の一端か、
よく女性の裸姿が見られた。
2階に勝手と物干し場と風呂場がある造作の料亭があった。
夕立が激しく降る夏のある日、
その風呂場から、
これから店に出るために身支度の風呂に入ったと思われる若い女性が、
裸のまま物干し場に出てきて、
風呂場で洗った子供のシャツ類を干し始めた。
夕立の中の安心感がそのような行動に出させたのだろうとその時は思ったのだが、
その後もたびたび風呂場から物干し場に出てきては、
裸のまま物干に洗濯物をかけている姿があり、
私の居た部屋以外からも、
目線をさえぎるもののない物干し場は、
ある日たまたまとった行動と言うことでなく、
日常的に気兼ねなく行なっていたことが容易に推測された。
日常的と言えば、
私のいる部屋から少し離れたところに建っているマンションの上の方に、
若い芸妓の人が住んでいた。
その芸妓がベランダに洗濯物を干す時は、
私の部屋からは高さの関係からちょうど上半身が見えるのだが、
いつも豊な胸が揺れていた。
時々、洗濯物を干し終わると、
そのままの姿で背伸びや体操などをしている姿や、
遠く東京湾の方をベランダに頬杖をついて、
かなりの時間眺めている姿が見うけられた。
それから今でもどうしてそう言う格好で居たのかわからない光景が、
ひとつある。
それは小料理屋のこれもそう言えば2階に台所のある家で、
夕飯時、台所に女の人が2人後ろ姿で料理の支度をしていた。
はじめは気づかなかったのだか、
どこかその光景がおかしいと思っていたら、
ひとりの女性の後ろ姿が裸の上にエプロンをかけていて、
背中とお尻が丸出しになっているのに気づいた。
あまりにもきぜわしく料理の準備をしているので、
はじめ見かけた時はすぐには気がつかなかったが、
素肌にエプロンをかけて忙しそうにまな板の上の野菜のようなものを切っていた。
いま思えば、風呂から上って急いでいたのか、
暑かったのかそのままエプロンをサッと羽織って料理ていたとしたら、
下町気質の、威勢がいいと言えばこれほど威勢のいいこともないかもしれない。